マルミノアリタケ
Cordyceps formicarum Y. Kobayashi

発生地:香川県・仲南町
採集年月日:May.16,1999

膜翅目Hymenopteraのアリ科Formicidaeに寄生する虫草 であり、本種は朽木生、マツなどの幹の中に巣をつくるムネアカオオアリの胸部から子実体fructificatioを発生させている。

子実体は太鼓のバチ状で、頭部の結実部はタンポ型。柄は淡黄白色で弾力性ある肉質。高さは12mm×1mm。結実部は一般に卵形、または洋コマ形とされ ているが、本種は淡黄色の球形で直径3mmの大きさであった。

子嚢殻peritheciumはハチタケと同じく斜埋生、細口瓶型で大きさは830×370μ。子嚢ascusは700×4〜5μ。2次胞子sec- sporeは細長い紡錘形で9.8-10.5×1-1.5μ。

発生環境は落葉樹、照葉樹と針葉樹の混交林内に発生し、高温多湿の7〜9月にかけて最盛期であるが、西日本以南では冬季期間にても発生する。日本の他は台 湾でも発見が確認されている。

1999年5月、徳島の村上光太郎先生の御好意により譲り受けたアリタケの一つであり、直ちに寒天培地に接種し人工培養を試みた。その結果、自然界に発 生すると同じ子嚢殻を有する有性型(teleomorph)子実体を発生させることに成功した。

蟻に寄生して発生するアリタケの人工培養において、寒天培地上に自然界と同じ有性型の子嚢殻をつくることに成功したのは、史上初めてである。

N.M.I.による人工培養成功。

感染症 VOL.32 No.6より