ツクツクボウシタケ
Isaria cicadae

発生地:宮城県
採集年月日:Aug.24.2014

セミ科Cicadidaeの幼虫に寄生する不完全イザリア型の虫草で、ツクツクボウシ(蝉)の幼虫に寄生し、分生子(胞子)で世代を繰り返している不完全世代型セミタケの一種である。他に子嚢菌で世代をつくる完全世代型のツクツクボウシセミタケが虫草菌学の泰斗・小林義雄先生により記録されている。

虫草菌の発生ホスト(宿主)である昆虫の生息環境により異なり、セミタケ、サナギタケなど地中に生息する昆虫の幼虫、蛹に寄生し発生する地生型、クチキツトノミタケなど、朽ち木(風倒木)上に発生する朽木生型、クモ(蜘蛛)に寄生のクモタケ、ハエ(蠅)に寄生するハエヤドリタケなど、葉や枝に付着して発生する気生型の3つのタイプに分類される。

セミタケの大半はホストの地中にある地生型の虫草菌で、今回のように不完全世代型イザリアの気生型セミタケは珍しい。集中豪雨などの異常な気象条件により表土が流出、地中生のセミタケが地表に露出したものと思われる。

分生子の顕微鏡観察では、楕円形、紡錘形で大きさは5-8×2-3μm、ツクツクボウシタケの分生子と一致した。

〔追記〕不完全世代型とはイザリア型ともいわれ、子嚢殻をつくらず、分生子 (胞子)で世代を繰り返している虫草菌をいう。  

本種は青葉山を探索中、遊歩道にて戸田真一氏により採取された。