セミタケ(中国名:蝉花)
Cordyceps sobolifera (Hill.) Berk. et Br.

発生地:京都・洛北
採集年月日:July.26,1980

同翅亜目Homoptera、カイガラムシ科Coccidaeの昆 虫に感染、寄生する虫草菌で、地中に生息するニイニイゼミの幼虫頭部より棍棒状の子実体を発生させる。
本種はセミ(蝉)に寄生する虫草としては最も基本的な種類で、1763年、Hill.により学名Clavaria soboliferaセミタケとして命名された。

地上部の子実体であるキノコと、宿主である地下部のセミが渾然一体をなして形成する姿は、虫草の典型的な形態とされてきた。

本種の子実体は単一の棍棒状で高さ7cm、先端部はやや太く約10mm、基部に向かい細まり3mmになる。色彩は全体的に淡赤褐色で肉質、上部の結実部 には埋生型の子嚢殻perithecium口縁部が粒点状に密布する。
基部(セミの頭部)にはコブ状の盛り上がりが見られ、内部には紡錘形で無色、平滑な分生胞子を形成する。この部分より成熟とともに短枝の柄を発生させる。
子嚢殻は細口瓶形で、大きさ500-600×220-260μ。子嚢ascocarpiumは400-470×5.6-6.3μ、子嚢胞子 ascosporeは細長い糸状で、二次胞子6-12×1-1.5μに分裂する。

産地:日本、南北アメリカ、オーストラリア、中国、ニュージーランド、スリランカ、マダガスカル

N.M.I.による人工培養成功。

〔追記〕ヨーロッパには発生の記録はない。日本では関東以南に発生し、栃木県都賀郡以北の東北地方に は未だ発生の記録はない。地生型で、初夏から夏の盛りにかけ庭園、神社の境内、お寺や、低地山野の林叢内に発生する。薬効では、セミに寄生するイザリア形 の虫草ツクツクボウシタケには免疫抑制作用の活性成分が確認されており、一般にセミ寄生の虫草には免疫賦活作用、制癌作用は期待できないものと思われる。 中葯では痙攣を解き、風熱を散じ、翳障を退け、疹を透す、とある。小児の引きつけ、咳嗽、喉頭の腫れ、かすみ目など目の疾病、痘瘡、蕁麻疹などアレルギー 性の疾患に他の方剤とともに用いられてきた。

感染症 VOL.32 No.3より