ベニイロクチキムシタケ
Cordyceps roseostromata Y. K et D. S

発生地:青森県・十和田
採集年月日:July.26,1988

鞘翅目Coleoptera甲虫類のゴミムシダマシ科Tenebriodaeの 幼虫に寄生する虫草で、朽ち木上に発生する。

甲虫類に寄生する代表的虫草には先に掲載したコガネムシタンポタケがあり、本種は北方系の十和田奥入瀬を中心に発生する朽木生の虫草である。

ブナ、カツラ、クヌギ、ミズナラ、トチノキ等、原生林内の朽ち木上に鮮やかな紅色の子実体stromaを発生させる。

子実体は虫体の各部から2〜10本発生し、朽木中の幼虫と朽木上の子実体とは白い糸状の細い菌糸体で繋がっている。子実体は小型で、結実部は円筒状でふ くらみ、成熟するとやや折れ曲がるのが特徴である。柄の高さは5〜20mm、肉質で美しい鮮紅色を帯びる。

子嚢殻peritheciumは半埋生、洋梨形で、濃い紅色、孔口部は子嚢果ascomaの表面上に突出する。280-300×140-160μ。

子嚢胞子ascosporaは細長い糸状で、太さは3-3.5μ、頭部の径2.5-3μになる。2次胞子sec-sporeは4-5×1μ。

註:写真は1988年、十和田・奥入瀬の渓流沿いの風倒木上に発見したもので、高木森林内の暗がりに心踊る思いで採集したものである。

N.M.I.による人工培養成功。

感染症 VOL.29 No.4より