ハナサナギタケ
Isaria japonica Yasuda

発生地:山形県・釜渕
採集年月日:Jun.29,1992

鱗翅目Lepidpteraの蛾の幼虫、蛾に寄生する虫草菌で、不完全世代の分生胞子 で世代を繰り返すイザリアIsaria型の虫草菌である。

地上部の子実体stromaは1〜20個、根本から叢生し、樹枝状、ホウキ状、またはサンゴ状に中途の多数の分生胞子を浸ける。子実体の柄は円柱状で、ときには平たく偏平して淡黄色を帯びる。地上部の高さ約5〜40mm、風や雨の刺激を受けると粉状となって空中に飛散する。

分生胞子は楕円形、大きさ1.5×2.7μmで、コナサナギタケIsaria farinosa(Holm.)Fr. の胞子の球形と異にする。

発生時期は虫が活動する夏の最盛期6〜8月が最適で、11月の中頃にまで及ぶ。発生場所は高温、多湿の広葉樹林帯で、河川の流れる氾濫台地の樹陰地帯が 発生の候補地となる。一般に里山の雑木林、山地の落葉樹林内の地上、苔の生える岩面に固着発生する。

N.M.I.による人工培養成功。

I.japonica培養液は免疫増強作用、および抗腫瘍作用のあることをin vivoの動物実験で 証明し、日本薬学会第123、124年会で発表した。

〔追記〕ノムシタケCordyceps属の菌類には子嚢胞子で世代を継承する完全世代型の子嚢菌群と、分生胞子で世代を繰り返す不完全世代型の子嚢菌群の虫草菌群がある。その代表的な菌類の不完全世代型にIsariaがあり、鱗翅目の昆虫の他、鞘翅目の甲虫類、クモ、 セミ、カメムシ、カイガラムシ、アブなどに寄生する。またクモ、鱗翅目の昆虫に寄生するGibellulaがあり、鱗翅目と鞘翅目の昆 虫に寄生するPolycephalomyces、トンボ、スズメガ、ハエ、アリなどに寄生するHymenostilbe がある。他にもHirsutella、StilbellaCephalosporiumSynnematiumな どの昆虫に寄生する不完全世代型の菌類が知られている。

感染症 VOL.34 No.4より