その他 論文等

協力機関であるN.M.I.自然薬食微生物研究所の50年以上にわたる研究データの一部を抜粋して公開しております。
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また下記のN.M.I.自然薬食微生物研究所の公式ページにて、多くの論文等がご覧いただけます。

https://www.tochukaso.co.jp/study/


『日本冬虫夏草二次代謝物のヒト腫瘍細胞に対する抑制効果』

2013(平25)3月27日〜30日・日本薬学会第133年会(横浜)

【目的】
冬虫夏草(Cordyceps属)菌由来の多くの成分は、古来より民間薬あるいは薬膳料理などの機能的食品としての効用だけではなく、未知成分が様々な薬理作用を示す可能性が考えられ、多彩な機能を持つものと考えられているが、自然界では発生が希少なため絶対的な供給量が少ないことから、これらの薬理学的有効成分について検討されていないものも多い。我々は、安定した資源供給および資源保護を目的とした人工培養に関する研究を行うとともに、いくつかの冬虫夏草について大量培養することに成功した。40種の冬虫夏草について、ヒト癌細胞に対する抗腫瘍活性の観点からスクリーニングを行い、活性の強かったベニイロクチキムシタケの活性成分を特定し、作用機構を明らかにすることを目的とした。本菌の人工培養の培養上清を有機溶媒により抽出分画した。

【結果および考察】
① 人工培養することに成功した40種の冬虫夏草について抗腫瘍活性のスクリーニングをした結果、乳癌細胞に顕著な抗腫瘍活性を有する10種の冬虫夏草を見出した。その中でもベニイロクチキムシタケFDの抗腫瘍活性は顕著であった。

② ベニイロクチキムシタケFDのクロロホルム画分および酢酸エチル画分は、いずれもFDよりも低濃度でヒト白血病U937細胞及びヒト乳癌MCF7細胞に対し、強い細胞増殖抑制効果を示し、細胞死の形態はアポトーシスであった。また、U937細胞に対するアポトーシス誘導には、caspase-3が関与することが明らかとなった。

③ ベニイロクチキムシタケFDの経口及び静脈内投与群でCD4及びCD8陽性細胞の増加が認められ免疫能の増強が認められた。

以上の結果から、ベニイロクチキムシタケのクロロホルム画分に、直接的に癌細胞の増殖抑制効果を持つ物質が存在することが明らかとなり、テルペノイドやフラボノイド等の疎水性低分子化合物が活性本体である可能性が示唆される。また、ベニイロクチキムシタケFD投与によりT細胞活性化作用が認められたことから、FDには抗癌活性を持つ化合物の他に免疫賦活作用を持つ化合物も含まれることが示唆される。さらに急性、亜急性毒性、慢性毒性も認められない(data not shown)ことから副作用の少ない治療薬として期待できる。


※経口および静脈内投与はマウスを使った実験結果であり、人に対しても全く同じということではありません。より人に近い哺乳類の仲間を使って生理活性を見ています。


『Screening of Japanese Chuso samples for their anti-obesity and anti-oxidant activities』

2009年10月18日 日本薬学会東北支部大会第48回(仙台市)

【Objective】
Cordyceps species are rare and valuable medicinal mushrooms.They have been used for prevention and treatment of various diseases,especially in Chinese traditional medicine for centuries. The aim of this study was to evaluate anti-oxidant and anti-obesity activities of Japanese Chuso species samples in vitro.

【Materials and Methods】
Fungi were collected in Tohoku district, Japan, and their spores were cultivated in culture medium. Freeze dried metabolic extracts of cultivated fungi spores were used in these experiments as samples. Anti-oxidant activity was determined by DPPH(2,2-diphenyl-1-picryl-hydrazyl) radical scavenging method and anti-obesity activity was estimated by BALB-DTNB method (lipase inhibition assay).

【Results and Discussion】
Among 30 samples tested, no sample showed strong anti-oxidant activity, but samples 23 (mixture) and 26 (mixture) and weak activities. Their IC50 values were 111.5 and 58.9 ug/ml, respectively. In anti-obesity test, Isaria japonica (IR=50.99%) and Cordyceps sp. Kobayashi (IR=49.75%) showed the strongest activities. These active samples may be expected to make contribution to prevention and treatment of ageing and lifestyle-related exogeneous obesity.

【結果と考察】日本語訳
30種類の試料中、強い抗酸化作用を示す虫草はなかった。しかし試料混合エキス23と試料混合エキス26は弱いながら抗酸化作用が確認された。それぞれ有効濃度50%はIC50は111.5と58.9μg/mlであった。
抗肥満作用について、有効濃度比率IRはハナサナギタケでは50.99%、ミジンイモムシタケでは49.75%で、強い活性を示した。


これらの活性がある試料は老化予防、生活様式などによる外因的肥満に対して役立つ可能性が出てきた。


『玄米培地で産生した冬虫夏草属 Isaria farinosa と Isaria sinclairii の抗腫瘍効果について』

2009年10月4日 日本生薬学会第56回年会(京都市 京都薬科大学)
(NMI自然薬食微生物研究所)矢萩信夫、矢萩禮美子
(東北薬大)菅野秀一、石川正明

【目的】
冬虫夏草属菌は、滋養強壮あるいは免疫調整物質として珍重されている。演者らは冬虫夏草属菌 Isaria japonica Yasudaハナサナギタケ)培養液が、Sacoma180(S-180)癌細胞に対する増殖抑制効果、細胞性免疫応答増強作用あるいは消化管免疫において制がん剤 5-FU 投与により低下した免疫応答を増強することを報告している [Int.Immunopharmacol.,5, 903-916(2005);日本薬学会第125年会(2005);日本薬学学126年会(2006)]。新たに玄米培地で産生した種々の冬虫夏草属菌の抗腫瘍効果について検討したので報告する。

【方法】
実験動物:4週令のddy系雄性マウスはSLC(日本エスエルシー、静岡)から購入して使用した。試料は、自由摂取させた(1匹のマウスは、およそ 5g/1日摂取)。抗腫瘍活性:1群10匹のマウスに、S-180 癌細胞(1×106個)を皮下接種した。癌細胞を接種して18日後に腫瘍重量を測定した。各群ごとに平均腫瘍重量を求め同時に実施した対照の玄米粉末投与群の平均腫瘍重量との比較から抗腫瘍作用を算出した。NK活性:1群6匹のマウスを使用し、所定の時間に脾臓細胞を採取した。YAC-1細胞は10%FCS添加RPMI培養液で調整した。3H-Uridine で標識したYAC-1細胞(2×105/ml)に対して10倍、20倍、50倍あるいは100倍の脾臓細胞を接触させ5% CO2、37degcで培養した。対照群(Native)として未処置群の脾臓細胞を使用した。脾臓細胞未添加との比較によりNK活性を算出した。

【結果・考察】
マウスにS-180癌細胞を接種して24時間後から18種類の冬虫夏草属菌あるいは複合した冬虫夏草属菌を摂取させた時、Isaria farinosa(コナサナギタケ)(抑制率61.6%)と Isaria sinclairiiツクツクボウシタケ)(抑制率53.4%)で最も強い細胞増殖抑制作用が観察された。NK活性に及ぼす影響について検討した。 YAC-1細胞と10倍、20倍、50倍あるいは100倍未処置脾臓細胞との接触により、ほぼ細胞比の増大に依存しNK活性の増大が認められた。YAC- 1細胞と20倍の脾臓細胞との接触させた時、コナサナギタケあるいはツクツクボウシタケを5、10あるいは15日摂取ではNK活性の増大が認められた。玄米培地で培養したコナサナギタケあるいはツクツクボウシタケにおける抗腫瘍効果は、免疫調整作用に起因することが示唆された。


※以上はマウスを使った実験結果であり、人に対しても全く同じということではありません。より人に近い哺乳類の仲間を使って生理活性を見ています。


『日本冬虫夏草のミジンイモムシタケ、マルミノアリタケ、ウスキサナギタケ、サナギタケ培養液の抗腫瘍効果』

2008年(平20)9月19日〜20日・日本生薬学会第55回年会(長崎)

【緒言】
冬虫夏草属菌は、滋養強壮あるいは免疫調整物質として珍重される。 演者らは虫草属菌Isaria japonica Yasuda(ハナサナギタケ)培養液が、Sarcoma180(S-180)癌細胞に対する増殖抑制効果、細胞性免疫応答を選択的に増強することを報告している。[Int.Immunpharmacol.,5,903-916(2005);日本薬学会第125年会(2005);日本薬学会第126年会(2006)]。新たに作製した冬虫夏草属菌Cordyceps sp.nov.ミジンイモムシタケ)、Cordyceps formicarum Y.Kobayasiマルミノアリタケ)、Cordyceps takaomontana Yakushiji(ウスキサナギタケ)、およびCordyceps militalis(Vuill)Fr.(サナギタケ)培養液凍結乾燥品の抗腫瘍効果について検討した。

【方法】
S-180癌細胞に対する抗腫瘍効果は、ddY系雄性マウスにS-180細胞、あるいはEL-4癌細胞に対する抗腫瘍効果は、C57BL系雄性マウスに皮下(固形癌)または腹腔内(腹水癌)に106個を接種した。試料は癌細胞を接種して、24時間後から1日1回10日間経口投与した。固形癌は18日後に腫瘍重量、腹水癌は55日間の生存率を測定し、癌細胞のみを接種した対照群と比較した。マクロファージ細胞の活性化作用は、J774.1あるいはRAW264.4細胞と24時間培養してTNF-αはエルザ法、一酸化窒素(NO)は比色法で測定した。

【結果・考察】
S-180固形癌に対して、Cordyceps sp.nov.(Fig.1)、Cordyceps formicarum Y.Kobayasi(Fig.2)、Cordyceps takaomontana Yakushiji(Fig.3)、およびCordyceps militalis(Vuill)Fr.(Fig.4)培養液凍結乾燥品(10、30、50あるいは100mg/kg)は、用量に依存した細胞増殖抑制作用が観察された。腹水癌に対しては、観察されなかった。J744.1細胞に対してCordyceps militalis(Vuill)Fr.は、用量(0.1、1、10、100μg/mL)に依存したTNF- α産生が観察された(Fig.5)。

Cordyceps militalis(Vuill)Fr.はEL-4固形癌に対しても、ほぼ用量に依存した細胞増殖抑制作用が観察されたが(Fig.6)、腹水癌に対しては、観察されなかった(Fig.7)。  RAW264.7細胞において、いずれの冬虫夏草属菌(0.1、1、10、100μg/mL)もNO産生作用が認められた(Fig.8)。

以上のことから、今回作製した冬虫夏草属菌培養液凍結乾燥品は、いずれもIsaria japonica Yasudaと同様にマクロファージを活性することにより、抗腫瘍作用を示すことが示唆された。


※以上はマウスを使った実験結果であり、人に対しても全く同じということではありません。より人に近い哺乳類の仲間を使って生理活性を見ています。


『ミジンイモムシタケの人工培養におけるコラーゲン様ゲル塊の産生について』

2008(平20)3月26日〜28日・日本薬学会第128年会(横浜)


【目的】
ミジンイモムシタケCordyceps sp.nov.は、特に末期癌の転移、あるいは進行に効果があるとされ、本邦あるいはアジア諸国において癌の治療や免疫抑制薬として注目されている冬虫夏草属菌の一種である。本会第127年会において、我々はCordyceps sp.nov.抽出エキスのラット肺マトリックスメタロプロテアーゼ阻害作用を報告したが、その中で人工培養液中に、粘着性で弾力があり、安定なコラーゲン様ゲル塊が堆積沈殿することを認めた。そこで、そのゲル塊の組成と利用について検討した。

【方法】
実験方法:ミジンイモムシタケは山形県羽黒山周辺より採取された菌体を人工培養したものである。培養により得られたコラーゲン様ゲル塊は凍結乾燥後、 50mM Tris-HC1にて試料溶液とし、トリプシンあるいはコラゲナーゼにて処理した後、下記のSDS-PAGE法では10%酢酸で溶解し、50mM Tris-HC1にて試料溶液とした試料を用い、次のマウス経口投与では、凍結乾燥粉末を十分に水に懸濁させたものを用いた。 SDS-PAGE:コラーゲン様ゲル塊試料溶液をトリプシン(37℃、5min、Nacalai tesque)、あるいはコラゲナーゼ(37℃、1hr、16.0875unit、collagenaseⅣ、Sigma-Aldrich)にて処理した後、10%SDS-PAGEに附し、タンパク質はCBB染色あるいはゲル−ネガティブ染色にて、糖タンパク質はPeriodicacid- Schiff(PAS)染色により確認した。また、ゲル塊の凍結薄切片(5μm)をコラーゲン・ステインキット(コラーゲン技術研修会)にてコラーゲンと他のタンパク質を分別染色し、その存在様式を観察した。

実験動物:9週齢ddY系雄性マウス

薬物投与:エーテル吸入麻酔下で背部皮下に無菌コットンペレット(20.0±2.0mg)を埋め込んだ。コットンペレットは錠剤型に成型し、全て同重量、同形状を維持した。術後1h後からCordyceps sp.nov.コラーゲン様ゲル塊凍結乾燥試料を水に懸濁させ、給水瓶より摂取させた。試料溶液は 24hまでの使用とし毎日調整した。投与量はその飲水量から換算し、10mg/kg/dayと100mg/kg/dayになるように試料溶液を調整した。術後10日目にエーテル麻酔下でコットンペレット埋め込み周辺組織を得て試料とした。試料採取の際の写真をFig.3-5に示す。試料はその湿重量及び凍結乾燥後の乾燥重量、及び組織凍結切片(30あるいは15μm)のMayer's-Hematoxylin-EosinY染色による組織形態学的観察を行い比較した。

■Fig.1:Cordyceps sp.nov.コラーゲン様ゲル塊(Cs.-gel)を凍結薄切し(5μm)、コラーゲンと他のタンパク質の分別染色した結果、赤色に染色されたコラーゲン様繊維タンパク質が認められた。

■Fig.2:Cs.-gel溶液をトリプシンあるいはコラゲナーゼにて処理した後、10%SDS-PAGEに附し、タンパク質をゲル-ネガティブ染色で、糖タンパク質をPAS染色により確認した。その結果コラーゲンにおける両酵素処理のパターンと異なる泳動パターンが得られ、コラーゲン類似の糖タンパク質がその構成要素として重要であることが示唆された。

■Fig.3-5:背部皮下に埋め込んだコットンペレットの10日後の観察である。
・Fig.3:対照群では埋め込んだコットンペレットにはほとんど変化は認められなかった。
・Fig.4-A:Cs.-gel(10mg/kg.p.o.)マウスではペレット周囲に血管新生を認めたマウスも存在した。
・Fig.4-B:Cs.-gel(100mg/kg.p.o.)マウスにおける、ペレットの皮膚組織への癒着。
・Fig.5:Cs.-gel(100mg/kg.p.o.)マウスにおいて認められた、ペレットを包囲する嚢状組織塊の存在。

■Fig.6-8:上記結果の組織像の詳細な観察である。
・Fig.6:対照群では埋め込んだペレット外周での組織新生はわずかであった。
・Fig.7-8:・Cs.-gel(100mg/kg.p.o.)マウスではペレット外殻に肥厚した組織の新生を認め、さらにその
 外周と皮膚真皮網状層との間には壊死した組織細胞群を認めた。

■Fig.9:背部皮下に埋め込んだコットンペレットの10日後の重量変化である。湿重量及び乾燥重量共にCs.-gel投与群では対照群に比較し有意に増加していた。

【まとめ】
Cordyceps sp.nov.コラーゲン様ゲル塊(Cs-gel)にはコラーゲン様繊維蛋白質が認められ、その溶液をトリプシンあるいはコラゲナーゼにて処理した結果、コラーゲン類似の糖蛋白質がその構成要素として重要であることが示唆された。 ◎マウス背部皮下にコットンペレットを埋め込み、10日間Cs-gelを摂取させたマウスでは、ペレットの皮膚組織への癒着、及びペレットを包囲する嚢状組織塊の存在を認めた。このとき、対照群では埋め込んだペレット外周での組織新生はわずかであったが、Cs-gel 投与群ではペレット外殻に肥厚した組織の新生を認め、さらにその外周と皮膚真皮網状層との間には壊死した組織細胞群を認めた。

以上のことから...

Cordyceps sp.nov.コラーゲン様ゲル塊の摂取は、異物や腫瘍、あるいは悪性腫瘍のような浸潤性増殖細胞の増殖に対する除去作用を有する可能性があることが推察された。詳細は今後さらに検討する予定である。


※以上はマウスを使った実験結果であり、人に対しても全く同じということではありません。より人に近い哺乳類の仲間を使って生理活性を見ています。


『冬虫夏草属菌の一種、ミジンイモムシタケのラット肺マトリックスメタロプロテアーゼ阻害作用』

2007年(平19)3月28日〜30日・日本薬学会第127年会(富山)

【目的】 冬虫夏草属菌はバッカクキン科Clavicipitaceaeのノムシタケ属Cordycepsに属する子嚢菌類の総称であり、昆虫あるいはクモ類、地下生菌(土団子菌)に寄生して世代を繰り返す。現在、本邦あるいはアジア諸国において昆虫寄生の子嚢菌類が癌の治療薬として注目され、特に末期癌の転移あるいは進行に効果があるとされる。近年、癌の転移におけるプロテアーゼ(MMP)は癌の浸潤・転移・虚血性脳及び心疾患、炎症、あるいは血管新生に関与することが知られている。そこで、ミジンイモムシタケCordyceps sp.のラット肺組織MMP活性に対する影響を検討した。

【実験方法】 ミジンイモムシタケエキスの調製と抽出:ミジンイモムシタケ菌糸体を75%メタノールで冷浸し、綿栓濾過後に濃縮しエキスを得た。得られたエキスは水に溶解しクロロホルム、酢酸エチル及びn-プタノールにて分配しそれぞれのエキスを得た。SDS-PAGEによるMMP阻害活性を指標として、 Sephadex LH-20、Wakogal C-200カラムコロマトグラフィー及びPTLCにて精製を繰り返し活性画分を検索した。以上をChart.1に示す。

実験動物:7週齢Wistar系雄性ラット肺組織ホモジネート

MMP酵素源:肺ホモジネート(50mM Tris-HCI,pH 7.5 9000×g上清画分)をp-aminophenylmercuric acetate(APMA,0.5mM)で処理しMMPを活性化してMMP酵素源とした。

MMP阻害活性の測定(以下の実験は4回繰り返し行いその平均値とした):SDS-PAGEゼラチン分解活性:ゼラチン(1.0mg/ml)を基質として各披験物を添加し、37℃、18hインキュベーション後にSDS-PAGEに附しCBB染色により蛋白質を確認した。

ゼラチンゲルザイモグラフィー:活性化したMMPを非還元下で1.0mg/mlのゼラチン含有ゲルで泳動した後に37℃、18h、NaCl及びCaCl2を含む緩衝液中でインキュベーションしCBBによりゼラチン消化活性を可視化した。定量的画像解析:CBB染色後のゲルはEPSON ES-2200で取り込み、Image Gauge v4.0(Fuji Photo.)により定量的解析を行って比較した。

【結果・考察】 Fig.1 0.5mM APMAにより活性化されたMMP群によるゼラチン分解活性のSDS-PAGEによる測定の結果及びゼラチンゲルザイモグラフィーの結果を示す。活性化されたMMP群はEDTA(10mM)でその作用に阻害されること、さらに1.10-phenanthroline(1mM)でEDTA同様に阻害が認められるが、セリンフロテアーゼ阻害剤のphenylmethyl sulfonyl fluoride(PMSF,1mM)では阻害が認められないこと、及びカゼインザイモグラフィーの結果(data not shown)から本活性はMMPsに由来することを確認した。以下定量的画像解析法により得た結果によりミジンイモムシタケのMMP阻害作用とその活性成分を検討した。

Table 1及びFig.2 ミジンイモムシタケ75%MeOH抽出エキスでは6.4mg/mlでEDTA(10mM)と同等のゼラチン分解阻害活性を認めた。分画したエキスはその収率から同様にゼラチン分解阻害活性を検討したところ、n-BuOH画分の活性が最も強く、その阻害作用は濃度依存的(IC50:420μg/ml)であった。

Fig.3 次にSephadex LH-20カラムクロマトグラフィー(aq-MeOH)によるn-BuOH画分の分画を進めたところ、F2画分(926.1mg)を得た。この画分によるゼラチン分解阻害活性は濃度依存的でありIC50値は0.9μg/mlであった。さらにこの画分の MeOH可溶性画分はWakogel C-200(CHCl3:MeOH=1:4)及び再結晶により精製された化合物Aと化合物Bが得られた。これらのMMP阻害作用をゼラチンゲルザイモグラフィー法により検討した結果、活性型MMP-2 に対する阻害作用を認めた。しかし化合物A及び化合物B以外の阻害物質の存在も推察されたことから、ミジンイモムシタケのMMP阻害作用成分の特定をさらに進める必要がある。今後化合物A及び化合物Bの構造決定と他の活性成分の検索あるいはMMP-2阻害作用の機序等の詳細についてさらに検討を行う。

【まとめ】
ミジンイモムシタケCordyceps sp. はマトリックスメタロプロテアーゼ阻害作用を示すことから、癌の浸潤・転移、虚血性脳及び心疾患、炎症、あるいは血管新生が関与する疾患に対して有効であると可能性が示唆された。


※以上はラットを使った実験結果であり、人に対しても全く同じということではありません。より人に近い哺乳類の仲間を使って生理活性を見ています。


『ハナサナギタケ(Isaria Japonica Yasuda)培養液の抗腫瘍効果(2)』

2006年(平18)3月28日〜30日・日本薬学会第126年会(仙台)


【目的】虫草菌の一種であるハナサナギタケIsaria Japonica Yasuda)は、滋養あるいは免疫調整作用を有する。矢萩らによりハナサナギタケ培養液が、細胞性免疫応答を増強すること、消化管免疫において制がん剤 5-フルオロウラシル(5-FU)で低下した免疫応答を選択的に増強することが報告されている。本研究では、ハナサナギタケ培養液凍結乾燥品(IJCE)の担癌モデルマウスに対する抗腫瘍効果について検討した。

【方法】4週齢のddy系雄性マウスにSarcoma180(S-180)あるいはEhrlich癌細胞、C57/BL6JマウスにEL-4細胞を皮下に 106個を接種し、24時間後から1日1回10日間[IJCE(p.o)、 5-FU(i.p.)、MMC(i.p.)IJCE+5-FU、IJCE+MMC]投与した。18日後に腫瘍重量を測定し、癌細胞のみを投与した対照群と腫瘍重量の平均値を比較した。一酸化窒素(NO)は比色法、TNFαはELISA法により測定した。

【結果および考察】いずれの癌細胞に対しても、IJCE(10、30,50,100 mg/kg)単独投与でほぼ用量依存的な抗腫瘍効果が観察された。S-180抗腫瘍細胞群ではIJCE(30 mg/kg)とMMC(0.5 mg/kg)あるいは5-FU(10 mg/kg)を併用するとMMC、5-FU単独郡よりも抗腫瘍効果の増大が認められた。マウスのマクロファージ細胞(J774.1)にIJCE(1、 10,100 μg/mL)を添加して4時間培養した時、TNFαの産生が用量依存的に観察された。さらに、J744.1細胞とIJCEを24時間培養した時には、NOの産生が用量依存的に観察された。 S-180担癌マウスにIJCE(10mg/kg、i.v.)投与した時、血清、肺、腫瘍、肝臓、脾臓にTNFα の産生が観察された。 以上の事から、IJCE(ハナサナギタケ培養液凍結乾燥品)はマクロファージを活性化することにより抗腫瘍作用あるいは制癌薬5-FUとMMCの抗腫瘍作用を増強することが明らかになった。

※以上はマウスを使った実験結果であり、人に対しても全く同じということではありません。より人に近い哺乳類の仲間を使って生理活性を見ています。


『ハナサナギタケ(Isaria Japonica Yasuda)培養液の抗腫瘍効果』

2005(平17)3月29日〜31日・日本薬学会第125年会(東京)

【目的】:我々はこれまでに、虫草菌の一種であるハナサナギタケIsaria japonica Yasuda)培養液が、細胞性免疫を増強することを明らかにしてきた。本研究ではハナサナギタケ培養液凍結乾燥品(IJCE)の担癌モデルマウスに対する抗腫瘍効果について検討したので報告する。

【方法】:4週齢のddY系雄性マウスを使用した。1)背部皮下にSarcoma180(S-180)癌細胞106個を接種した。癌接種と同時に0.1%あるいは0.2%の濃度でIJCE含有粉末試料を18日間投与した。18日目に粉末試料のみを投与した対照群と腫瘍重量の平均値を比較した。2)腹腔内にS-180癌細胞106個を接種した。24時間後から1日1回5日間検体[IJCE、5-FU、MMC(マイトマイシンC)、IJCE+5FU、IJCE+MMC}を腹腔内に投与した。55日間マウスの死亡の有無を観察し、癌細胞のみを投与した対照群と生存日数の平均値を比較した。一酸化窒素(NO)は比色法、TNFαは ELISA法、NOとTNFαのmRNAはRT-PCR法により測定した。

【結果及び考察】:S-180固形腫瘍の増殖に対して、0.1%あるいは0.2%IJCE混餌投与により、59および60%の抑制作用を示した。腹水型腫瘍の生存日数に対して、IJCE(10mg/kg)単独投与では対照群に比較して軽微の延長(1.12倍)が観察されたが、IJCE(3mg/kg)と MMC(0.5mg/kg)を併用するとMMC単独郡(1.32倍)よりも、生存日数の延長(1.65%)が認められた。

マウスのマクロファージ細胞(J774.1)にIJCE(1,10,100 μg/ml)を添加して4時間培養した時、TNFαの産生が用量依存的に観察された。さらに、J774.1細胞とIJCEを時間培養した時には、TNFα とN0のmRNAの発現が観察された。S-180担癌マウスにIJCE(10mg/kg,i.v.)投与した時、血清、肺、腫瘍、肝臓、脾臓にTNFαの産生が観察された。

以上の事から、IJCE(ハナサナギタケ培養液)はマクロファージを活性化することにより制癌薬5-FUとMMCの抗腫瘍作用を増強することが明らかとなった。

※以上はマウスを使った実験結果であり、人に対しても全く同じということではありません。より人に近い哺乳類の仲間を使って生理活性を見ています。